「まとまりなく、テーマも不明瞭」 おすすめ度:
投稿日:2006-03-15
前書きにもあとがきにもあるように、テーマは「精神病は身近にあるありふれたもの」ということらしいけれど、内容を読むと何を言いたいのかわかりにくい。司法と医療の連携欠如や「ひまわり」の問題など、興味深い問題提起も散見されるものの、精神異常による犯罪に対する好奇心をあおるだけのような記述や、ソフトドラッグを容認し解禁を奨励するかのような記述、あるいは小説『ドグラ・マグラ』を解説してみせたりと、まとまりがない。現場の当事者ならではの一貫した意思のようなものが感じられない。
それぞれのエピソードは読み物として面白いし、文章もこなれていて読みやすいけれど、読後に残るものがない。
同種の他著と比べると、薄味な印象。初めて読む人にはいいかもしれないけれど。
「それでもちょっと極端」 おすすめ度:
投稿日:2005-12-14
私はたぶんここに出てくるような人の誰よりも、長い期間精神科医をしていますが、それでもやはり一番極端なケースを描いて、これが現状だ!というのは、誤解を招くことが多いと思う。
「心のブラックジャック求む!」 おすすめ度:
投稿日:2005-05-21
現役の精神科医が書いたレポートと言うこともあり、生々しい、そして恐ろしい現在の世の中がわかります。精神病患者が殺人を犯したとき・・・彼らが裁かれないと言う今の法律は正しいのか。その家族はどう思うのか。精神病患者の治療とは一体どのようなものなのか?自分も精神病患者になり得るのではないのか。様々なことを考えさせられる一冊です。
「実務家の実直なレポート」 おすすめ度:
投稿日:2004-12-17
私も精神医療の現場にいるものだが、精神医療の現場の現実は、精神療法家と称する人の書くものとは程遠い。確かに最も厳しい現場を書いているのは確かだが、現実は、本書や「救急精神病棟」や 「屋根裏に誰かいるんですよ」といった著書に書かれているものの方が遙かに現実に近い。この本の更に優れた点は、抑制の効いた淡々とした文体であり、なるべく事実だけを書こうとする姿勢である。著者である精神科医や臨床心理士の「自分は救済者である」という幻想と、それに基づいた思い込みを除くと、内容が何も存在しないような本が氾濫する中で、この本の著者はあえて自分の解釈をできるだけ排除して、経験した事実のみを書くように勤めている。無論著者の意見も述べられているが、事実とはできるだけ明瞭に判るように書かれており、その意味で非常にフェアである。「精神障害は救済されるべき社会的弱者である。」という以外の視点からものを見ることが受け入れられない人にとっては、「患者や関係者への愛情や慈しみが感じられない。」といった感想になろうが、過大な感情移入は医療においても本を書くという点でも百害あって一利無しであろう。そういった視点でみると、筆者の解釈が入る連続幼女殺人犯やドグラマグラについての記述は寧ろ外して別の本に入れて、事実だけを書く形にした方が、本自体の完成度としては高くなったと思われる。確かに、触法精神病者の存在と同様狂気に対する猟奇的(著者は耽美的と書いている)興味は、存在しないことになっているが、確実に存在するものという点で、同じではあるが。筆者があえて「精神分裂病」という用語を用いているのも、「統合失調症」と名前を変えて、何か変わる様な気になっている精神神経医学会への暗黙の抗議であると私はとっている。
「実直なレポート」 おすすめ度:
投稿日:2004-09-12
実際に精神科病院臨床にたずざわっていると、本書に書かれていることは現実であることが判る。地方でもさほど状況は変わらず、お寒い現実である。しかしながら本書の表現はあまりに実直すぎて、読者には誤解される点が多いのではないかと懸念される。統合失調症の疾患と障害の概念がしっかりと理解されていない人には、どのように理解されるであろうか。本来英語圏では患者は“Patient with schizophrenia”と表現されるが、日本語では統合失調症者と表現されてしまうことが多い。そのような状況で本書を読むと、統合失調症患者というだけで無条件に何をするかわからないと思われてしまう可能性もある。一般書として出版するならその点の配慮は必要ではないかと思われる。
一方筆者は統合失調症の認知障害の専門家であり、その観点からの障害の説明には非常に分かり易いところがある。このように説明すればよいのかと勉強になった。全体を通して非常にストレートであり、誤解を恐れぬ実直なレポートである。